奈良町恋物語　奥山鳴〔大和路ろまん文庫〕

ハッピーエンドであっても悲劇であっても、物語ならば、ラストシーンが来ればそこで終わる。けれど現実は、その後も日常が続いて行く。ハッピーエンドが未来永劫続く事も悲劇に転じる事も、悲劇が新たな悲劇を生む事も、逆転勝利となる可能性もないとは言えない。
小さな頃、物語を読み終える度、主人公達の「その後」が気になっていた。その癖が抜けないまま今に至り、ひょんな縁から、奈良を題材とした短い物語を書いてみないか、と言う話を頂いた瞬間、書ける書けないより先に、登場人物達の「その後」が見える話を書きたいと思ってしまった。
人にはそれぞれの暮らしがあって、独自のサークルの中で生活しているのだけど、そのサークルのどこか一箇所が、誰かのサークルの一部と重なって、新たなサークルへと繋がって行く。たまたま入った喫茶店で長らく会っていなかった知り合いと出くわしたり、駅や行きつけの店でしょっちゅう見かける人がいて顔見知りになったりと、そんな出会いとも言えない人と人との小さな関わりを、奈良で暮らす人達のオムニバスな物語として描いてみました。
通りかかった町の名を耳にした時、風物詩である祭事を目にした時、登場人物達の「その後」を思って頂けたら幸いです。 平成二十三年 雨の匂いのする日に 奥山 鳴

「大和路ろまん文庫」は四季折々の奈良を舞台にした、短編小説シリーズです。時間軸は現代に控えながらも、そこかしこに木漏れ日も覗く心温まる愛情物語。奈良でしか手に入らなかった文庫を、このたび5本まとめて電子書籍化しました。どうか、この地の豊かな自然を感じていただいて、奈良町の新しい魅力を発見していただく縁(よすが)になればと考えています。

本文中、*印をタップすると、デジタル地図等にリンクされています。
その場所への道順などが検索できます。
自分が主人公になった気分で奈良町散策してみてはいかが?

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更新履歴
バグ修正しました。
奈良町恋物語の４本目「晴れた日には永遠が見える」（奥山鳴）、５本目「雨の匂いがする時は」（奥山鳴）を追加しました。