BL界初!?須和雪里の妖精ボーイズラブ『薄紅のイフリス』

　ピーチベルは、透き通るほど白い肌を持つ、生まれたての妖精だ。人間たちの胸から伸びる薄紅色の糸を手繰り寄せ、結わえることで、すれ違う恋人同士を結びつける、不思議な力を持っている。
　さて、ここに貴族のナフタスと美貌のエレーヴァという青年がいた。ふたりは相思相愛だったが、ナフタスがあまりに性に潔癖で手をこまねいているうちに、エレーヴァは、男らしい魅力溢れるゼアティス将軍の愛人となり、すっかりその虜となってしまう。
　そこでピーチベルは、嘆くナフタスのもとに夜な夜な訪れては、夢の中に忍び込み、童貞のナフタスに、あらゆる恋の流儀を教える。そうして自信をつけたナフタスは、エレーヴァに告白。めでたく結ばれるのだった。だがしかし、気まぐれ妖精ラタファナが、その幸せな恋人たちに目をつけて、片方を傷つけ、生み出される「悲しみ」を自分がもらうと云い出した。
　生まれて初めて、自分が取り結んだカップル。その片方が、片方を失って悲しむ姿など、ピーチベルは、けしてみたくない。ふたりには手を出さないでくれと涙ながらに懇願すると、残酷な美少女は一層面白がって、ならば代わりにピーチベルの美しい瞳を食べさせてと囃し立てる始末だった。
　目を失うと仕事ができない。仕事ができないと、妖精は力が弱まってやがて干からび、黒のカシアンに刈られてしまう運命だ。刹那、逡巡するも、妖精ピーチベルは、自分の薄紅色の眼球をラタファナに差し出し!?
　伝説の作家須和雪里がながらく隠し持っていた、秘密の未発表作品が、いま遂に暴かれる！
…ＢＬ桃色図書室特別編纂…